笄町濱矢 内装(2017)
photo ©Daisuke Tanuma
 

外苑西通り沿いの笄(こうがい)公園に面した建物の2階にある創作和食料理のレストランの内装設計。
店舗の入る建物は12階建てのSRC造の部分と2階建てのRC造の部分があり、平面的に公園に対して大きく開かれたウィングと奥にテラスを伴うウィングという二股に分かれており、その付け根の部分に入口がある。ここでは和食ダイニングと共に、ワインコレクションのための大きなワインセラーとバー、それに個室が望まれた。それら与えられた条件と建物の不定形な平面形状、隣接する環境を素直に重ねることを本計画の礎とした。
公園に面したウィングでは窓からの風景を十分に享受できるように長いダイニングスペースを配して、その背後を厨房とした。建物は外装に御影石やミラーステンレスがふんだんに使われていて如何にもバブル期の構えなのだが、軒天にもミラーが使われていて前面道路の動きがチラチラ反射で見える。そこで軒天のミラーを室内に引き込むように客席と対応する天井までステンレスの鏡面仕上としている。反射する面を大きくすることによって前面道路や公園の緑を室内に引き込んで動きに富んだ室内風景を獲得している。このような間口が広く奥行きの浅い内部が、鏡面天井が作用した曖昧な外部との協会に面することは、「縁側」のあり方を意識した結果である。
もう一方のウィングでは奥のテラスを庭園として整え、それを望むバーを設置し、プライバシーを考慮して手前に個室を並列的に配置している。個室とはいえ四方を壁に囲まれた閉鎖的な空間は避けたかったので、バーとの間に間口いっぱいのワインセラーを設けて両面をガラス張りにしている。このように、個室/ワインセラー/バー/庭園というレイヤーを重ねることで、プライバシーの調整をしつつも、庭園まで抜けのある室内風景を獲得することで開かれた個室を意図している。この室が連続する関係は、襖で仕切られて室が連続する日本建築の「奥」をいしきしたものである。
「和」風を判り易い素材や部位のボキャブラリーに依らずに、「縁側」や「奥」といった日本の伝統的な空間の形式を参照しつつ、現代的に解釈することで全体を構成していると言える。

 住所;東京都港区
 用途:和食レストラン 内装
 建築面積 : 144m2
 客席数:ダイニング20席 バー6席 個室6席
 設計期間:2016. 8 ~2016.11
 施工期間:2016.12~2017.02

 担当:澤井源太